『わたしを離さないで』 カズオ イシグロ
ブッカー賞という、英国の芥川賞みたいな賞を受賞している著者の作品。
村上春樹氏が愛読しているということで平積みにされていた。ふと手にとってページを開けたら、主人公が自分は31歳です。と述べていることに惹かれて、購入してみた。
それは2009年5月28日。
私の、31歳の最後の日だったからである。
何を書いてもネタバレになるおそれがあり、このタイトルから想像出来るような小説ではない。
私は、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と『時計じかけのオレンジ』、そして数人の海外純文学女流作家の作品をいくつか思い出した。
カズオ・イシグロは日本人だが5歳から英国で育った。
だから、作品は英語である。
英語圏の人が書いたに違いない文章である(当たり前か)。でも感受性は、日本人と英国人の間を行き来している感じで、そのアンバランス加減がとても新鮮だった。
かなり長編だが、章ごとに、新たな事実が判明していき、そのたびに読者は、なぜまたこんな・・・こんなことが・・・と胸をふさがれるような気持ちにさせられる。
英語で直接読んでみたいものだ。
読み終えた後、これが事実に近い話だったら・・・自分がヘールシャムで育てられたら・・・と思うと異様な恐怖を覚える。
読みながら、自分自身も少しずつ死の匂いと、英国の空の分厚い雲を見上げるような、諦めの境地を呼吸して行く・・・。
こんな風景を心に持ちながら生きている事は、辛いんじゃないだろうか、イシグロ氏は。
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