とにかくディケンズは英国の国民的作家、日本で言えば夏目漱石と芥川龍之介を足したような存在の方です。人生について運命論的であり、因果応報と考えているのが、『大いなる遺産』『オリバー・ツイスト』などにも顕著に顕れていますね。
仕事が教師だったら面白いのに、新聞記者でしたね。
いわゆるステレオタイプの自堕落な私小説家ではなく、きちんとした人だったようです。
文体を見ていても、退廃とは間逆の位置にいます。
さて、すごい言葉。
村岡花子(赤毛のアンシリーズで有名)訳、新潮社文庫286円の87ページ。
(信じられますか?この偉大なる訳本がこのご時勢に300円弱で手に入ります。300万円の価値がある読み物が)
『「スクルージさん!今日のご馳走を寄付してくださったスクルージさんのご健康を祝します!」
と、ボブが言った。』(クリスマスの日)
ボブはケチで強欲なスクルージが安い給料で買い叩いた書記。
いつもこき使われ罵られ、ボブの家族はスクルージに深い怒りを抱いているのに、
「現在のクリスマスの幽霊」に現実を見せられたスクルージは、
自分が普段いじめ抜いている書記の穢れない祝福の言葉を聞き呆然とすくむのです。
ボブには障害を持った小さな子供がいて、家族は貧困にあえいでいる。
『クリスマス・カロル』はディケンズのもっとも有名な教訓的作品で、キリスト教圏の人間なら教科書同然に読まされて育ったと思います。
私は無神教徒で、キリスト教圏の人の感じ方とディケンズの読み方は違うと思います。
でも、これは、泣けますよ・・・。
自分の罪深さに気がつきます。
たとえ悪気がなくてもどれだけ人を傷つけられるか、そしてそれによって自分がどれだけ報いを受けるか・・・帳尻は合っているのです。
そして・・傷つけた相手が、どこまでも無垢で純粋であなたを恨んで居ない場合、あなたは何を持って自分を罰せますか?
私はこのページで涙があふれて止まりませんでした。
頭の弱いボブの純粋さと、スクルージの取り返しのつかない後悔を思うと、胸が苦しくなりました。文豪とは、死後100年近くたってなお、人を涙させることの出来る人をもってそう呼ぶのですね。
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